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香風の希望で初めは香風と千歳が2人で会うことになった。
けれどこの公園には人が隠れられるような死角が無い。亮が居たらすぐに千歳にわかってしまうし、同じ制服を着たあたしたちが居ても話がしにくいだろう。
だから先に香風だけ公園に行って、あたしたちは公園近くの電車の高架下にある自販機の所で待機する事にした。
背の高い亮は立っていると目立つのでしゃがんでいる。まどろみさんもその横にしゃがんで亮の腕にしがみついている。すごく不安そうだ。
あたしと宮子とお嬢は見ようによっては高校生カップルを取り囲んでいる女子生徒の集団だ。ある意味目立っているかも知れない。
通りがかりの人が怪訝な顔をして過ぎていく。千歳がここを通りませんように…。
「必要になったら私が千歳さんのフォローをしますね。これはどちらの味方かと言うことでは無いですよ。失恋の痛みを和らげてあげたいから…」
ずっと黙っていたお嬢が言った。きっと失恋の経験がお嬢を優しくしている。千歳の事も心配なんだ。
その時、強い風が吹いた。雨の匂い。天気予報通りになった。
「強い風と雨の匂い来た~!千歳?千歳来た?」
声が大きいよ、宮子。そうじゃなくて天気予報通りだからね。と思ったが、
「うん、来た。あれが千歳だ」
と亮が言った。風が吹くのを待っていたかのようにタイミングが良い。
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