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この辺りでは見たことの無い制服を身に纏っている。あたしの記憶にある1度だけ会った儚げな千歳と今の千歳、見た雰囲気は変わらないけど…あたしは何か得体の知れない怖さを感じた。
「昔と違いますね」
お嬢も同じことを感じたようだ。
「そうかな…変わらないよ」
「いえ、亮くん、うまくは言えないですけど…強いて言えば男の人は鈍感ですね。では気付かれないように近付きましょう」
まどろみさんは亮を掴んだまま動かない。
「亮、頼みがある。何があっても私の手を離さないでくれるか?私も亮の手を離さないから」
「もちろんだ」
亮とまどろみさんは手をしっかりと繋いで立ち上がった。
あたしたちは香風と千歳からは見えないギリギリのところまで近付いた。2人の会話が聞こえる。
「メッセージのやり取りは有ったけど、会うのは久し振りだね」
「香風、変わらないね~。会えて嬉しいよ!北高祭に行ったら亮にも会える。楽しみだな~」
「そのことなんだけどね…亮に会ってどうするの?」
「変なこと言うね~香風。付き合うんだよ。久し振りに一緒にバスケもしたいな~。香風も応援してくれてるんだよね!」
病んでる部分がある…あたしはそう聞いていた。今の会話でよくわかった。千歳は亮との時間が止まっているんだ…。
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