第88話 小糠雨(こぬかあめ)

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第88話 小糠雨(こぬかあめ)

 霧のような雨が降ってきた。雷はどこか遠くへ行った。  あたしたちは小さな東屋の下に入った。 「暴れようとしたら、また掴むぞ」  真知子先生はそう言うと千歳の首根っこを離した。  その場に崩れ落ちそうになる千歳を先生はとっさに抱えて、抱き締めようとした。でも… 「先生じゃダメです!それは私の役目です」  お嬢はそう言うと千歳をギュッと抱き締めた。  千歳はお嬢の胸に顔を(うず)めて嗚咽(おえつ)をもらした。  千歳へのフォローもちゃんと考えていたとは本当にしっかりした連中だ。  真知子は少し感動を覚えた。  しかしお嬢は先生のほうを振り返って言った。 「だって先生のお胸は固…あまり柔らかく無いんですもの」  前にも言ってた。固いって。今回は固いって言いかけてから表現を変えたけど、敢えて言い直すと強調されてるようで余計に酷いなあ。  先生は引きつった笑顔で言った。 「なっ、なんだと…」
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