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マグカップにミルクを注いで、口を一口つけました。
ミルクがしょっぱければいいのに、と思いましたが、ほんのり甘い味でした。
ちびちびと温めたミルクを舐めていると、だんだんお腹が空いてきました。
戸棚からパンを取り出し、ちぎっては口に運びました。
パンは、味があるような、ないような、変わった味でしたが、ミルクにつければなんとか食べられました。
お腹が満たされたのか満たされていないのか、よくわかりませんでしたけど、ミルクがなくなったときに食べるのをやめました。
パンは、いつもはきちんと大きさを計ってナイフで切ってトーストするのですが、このときは適当に手でちぎって食べたので、自分がどれだけ食べたのかわからなかったのです。
まだ全然食べ足りない気がしましたが、いつもよりずっと多く食べてしまったような気もしました。
窓から差し込む月明かりを頼りに、疲れた体を寝室に運ぶと、セーターを脱いで、湿ったベッドに潜り込みました。
目を閉じると、たちまちのうちに眠りに落ちていきました。
翌朝、目が覚めてみると、体のあちこちに痛みを感じました。
気持ちのいい目覚めではありませんでした。なんだか、間違った枕で寝てしまったような、そんな朝でした。
ミミルは枕を確かめましたが、枕にはちゃんとミミルの頭の形が付いていました。
今が何時なのかわかりません。窓から見える空は、一面を雲で覆われていて、お日様のようすを伺い知ることはできませんでした。
ミミルは、きっとお日様はとうにお空の高くに上っているころだと思いました。
元々時間など気にしたことはありません。いつもと同じぐらいの時間だろうと思いました。
でも、本当はまだ日の出からそんなに経ってはいませんでした。
朝寝坊は、気持ちのいい眠りのときでないとできませんから。
ベッドから出ると、ブルリと震えました。一晩で、急に冬に近づいてしまったみたいでした。
ミミルはセーターを頭から被ると、無性に春が恋しくなりました。
こんなことは珍しいことでした。秋なら秋、冬なら冬を楽しむのがミミルのスタイルです。
窓の外に降りしきる雪を眺めながら、せめて熱いお茶を一杯飲み終えるまでは、春が来ないで欲しいと思うのが、いつものミミルでした。
でもこのときは、春にオオカミラおじいさんとビワを食べたときのことを、懐かしく思い出しました。
そう思うと、口の中に甘酸っぱい思い出が蘇ってきて、今すぐビワが欲しくなりました。
すると、トントン、とドアを叩く音がしました。
誰かがやって来たのでしょう。
ミミルはベルが鳴らないことを不思議に思いましたが、昨日鍵をかけたことを思い出しました。
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