第三章:届けられた荷

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 翌日に宮廷にゆくと、私を心配したのか高官のアリオクに呼び出された。  アリオクは高官の中でも三十代と若い。冷静で落ち着いた雰囲気を持っている。  彼は王に忠実な臣下で、王からの恐ろしい処刑命令も、私と同郷の者達のところに知らせて来た人でもある。  それがおとついのことだ。  そのときの私は驚いて、アリオクと話し合い、処刑を思いとどまらせて、王の間に自分を連れて行くように頼みこんだ。  どうにかして全員助けてみせます。自分にはその秘策があるんですと、説き伏せたのだった。  彼がいなかったら、あの日の夢解きで王に謁見(えっけん)するのは、ずっと困難だっただろう。  王宮内の、アリオクの執務室になっている部屋で、二人で会った。  私の様子を尋ねられたので、贈り物の籠が複数来たことや事情を説明した。  彼は私より、ずっと王宮に長く勤めているし内情に詳しい。  贈り物の意図も読めそうだ。 「ふーむ、そうだな」  話を聞くと、彼は立ったまましばらく考えていた。  それから安心させるように微笑んで、私の肩を叩いた。 「王は夢解きに満足したのではないですか。受け取っておくがいいでしょう」  まだ眉根を寄せたままの私を見て、アリオクはもう一度、軽く笑った。 「とにかく、あなたの首は繋がったようだ。喜びましょう」  そんなことを言われても、嬉しい気持ちはあまりわかなかった。 「あの、王のご様子はどうでしょうか」  私からの質問に、アリオクの表情が曇った。 「王は今朝の公務の場に出てこられなかった。詳しくは伏せられているが、深刻なご病気だとか」 「ええ!?」  私は驚いた。アリオクは私を手で制し、小声で続けた。 「昨夜は王宮付属の呪術師(アーシプ)達が亡くなったそうだ」 「呪術師達が? どうして」  自分の耳が信じられなかった。  王の間に臣下が集められ、夢解きをしたのは、つい昨日の朝のことだ。  あのときに命が助かって、安堵した呪術師(アーシプ)もいたはずだ。  その日の晩に亡くなってしまうとは、なんとも気の毒だ。 「呪術師(アーシプ)は王の治療も行う。無能ゆえに、王にお手打ちにされたという噂だ」  お手打ちということは、斬り殺されるとかしたのだろうか。  怖くなって、背筋が凍るような気がした。  噂だから事実は分からないけど。  あの気性の荒そうな王ならありえるなと思っても、口には出さなかった。  王の批判をどこかの誰かに聞かれたら、こちらの身も危ない。 「王がまだ皇太子のときは、こうではなかった。今の王のことは誰にもわからない」  どこか悔しそうなアリオクの言葉に、私は何も言えなかった。
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