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翌日に宮廷にゆくと、私を心配したのか高官のアリオクに呼び出された。
アリオクは高官の中でも三十代と若い。冷静で落ち着いた雰囲気を持っている。
彼は王に忠実な臣下で、王からの恐ろしい処刑命令も、私と同郷の者達のところに知らせて来た人でもある。
それがおとついのことだ。
そのときの私は驚いて、アリオクと話し合い、処刑を思いとどまらせて、王の間に自分を連れて行くように頼みこんだ。
どうにかして全員助けてみせます。自分にはその秘策があるんですと、説き伏せたのだった。
彼がいなかったら、あの日の夢解きで王に謁見するのは、ずっと困難だっただろう。
王宮内の、アリオクの執務室になっている部屋で、二人で会った。
私の様子を尋ねられたので、贈り物の籠が複数来たことや事情を説明した。
彼は私より、ずっと王宮に長く勤めているし内情に詳しい。
贈り物の意図も読めそうだ。
「ふーむ、そうだな」
話を聞くと、彼は立ったまましばらく考えていた。
それから安心させるように微笑んで、私の肩を叩いた。
「王は夢解きに満足したのではないですか。受け取っておくがいいでしょう」
まだ眉根を寄せたままの私を見て、アリオクはもう一度、軽く笑った。
「とにかく、あなたの首は繋がったようだ。喜びましょう」
そんなことを言われても、嬉しい気持ちはあまりわかなかった。
「あの、王のご様子はどうでしょうか」
私からの質問に、アリオクの表情が曇った。
「王は今朝の公務の場に出てこられなかった。詳しくは伏せられているが、深刻なご病気だとか」
「ええ!?」
私は驚いた。アリオクは私を手で制し、小声で続けた。
「昨夜は王宮付属の呪術師達が亡くなったそうだ」
「呪術師達が? どうして」
自分の耳が信じられなかった。
王の間に臣下が集められ、夢解きをしたのは、つい昨日の朝のことだ。
あのときに命が助かって、安堵した呪術師もいたはずだ。
その日の晩に亡くなってしまうとは、なんとも気の毒だ。
「呪術師は王の治療も行う。無能ゆえに、王にお手打ちにされたという噂だ」
お手打ちということは、斬り殺されるとかしたのだろうか。
怖くなって、背筋が凍るような気がした。
噂だから事実は分からないけど。
あの気性の荒そうな王ならありえるなと思っても、口には出さなかった。
王の批判をどこかの誰かに聞かれたら、こちらの身も危ない。
「王がまだ皇太子のときは、こうではなかった。今の王のことは誰にもわからない」
どこか悔しそうなアリオクの言葉に、私は何も言えなかった。
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