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次の日。
ついに、待ちに待った文書が来た。
自宅に届いたのは、王宮からの公式文書だ。
茶色い乾燥した粘土の表面に、王宮の正式な印章が押されている。
嫌な予感もしたが、やっと自分の処遇が分かる期待があった。
素焼きの表面を割って、中に入れられた粘土板を読む。
中には楔形文字で、もらう意味がわからないほどの、高い地位を与えると書いてあった。
配属先は王宮勤めだ。しかも王に近い場所に務めることになる。
「ひえっ」
思わず粘土板を取り落して、床で割るところだった。
ついに決定打だ。
否も応もない。王の命令は絶対だ。従うほかはない。
しばらく何も考えられなくて、無言で粘土板を棚にしまった。
ふらりと家の外に出て、もくもくと歩き始める。
考え事があると散歩を始めるのは、私の習性だった。
思考に没頭してしまうと、道で誰かに声をかけられても気が付かなかったりするほどだ。
曲がりくねった路地を歩き、住宅街を抜ける。
にぎやか過ぎる市場を避けて、水路沿いにゆき、大橋のところまで出た。
河沿いの風は今日も涼やかで、混乱した感情と、頭を冷やしてくれる。
日が暮れる時刻だったので、葦舟は河から引き上げられ、人足達は仕事を終えていなくなっていた。
人気の少なくなった大橋も、もう道を閉めかけている。
防犯のため、夜は大橋の木板は外されて、門も閉じられるからだ。
帰宅時間を考えて、橋を渡るのは止めた。
道のはしで空を見上げると、夕暮れの空は燃えるように赤い。
沈む太陽が、高い空全体を濃い紅色に変えていた。
日が暮れるにつれ道も暗くなり、治安も悪くなるので、その前に帰宅するため、通行人もしだいにまばらになってゆく。
向こう岸の水路の側に建っているのは、聖塔エ・テメン・アン・キだ。
焼き煉瓦作りの巨大な塔が、夕日を受けて赤く染まっていた。
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