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数匹の水鳥が切なげに鳴きながら空を飛び、ねぐらへ帰ってゆく。
知らない異国にひとりぼっちの気分になるのは、こんな夕暮れのときだ。
バビロンはこの聖塔みたいだ。
堂々と巨大で、揺るぎがない。
帝国の力に屈することに、どこか抵抗感のある自分は、無力でちっぽけだ。
バビロンの威光に悔しいとも思う。同時に立派さに驚きもする。
小国のユダが国力でかなうはずがない。
それは分かってる。
では、自分自身は?
自分はどうしたいんだろう。
もう、船に乗って逃げたいという憧れは起きなかった。
どこか遠くへ旅をしたいとか、羊飼いに向いてるかもという考えは、子供っぽい逃避だったと悟った。
何も持たない自らの手を握りしめて、心の奥で堅く誓う。
自分は出来る限りのことをするしかない。
選択肢を間違えないように、道を賢く選ばなくては、これから先を生きてゆけない。
バビロンにいて、流されたり、意志をすりつぶされて生きるのは嫌だった。
自分の内側にある、何ものにも屈しない気持ち。
それは熱い小さな火となって、自分を生かし続けている。
心の奥にある悲しみや痛みが自分を歪めないのは、この明かりがあるからだ。
本当は、王の事なんてどうでもいい。
誰かを憎いという気持ちがわかない。
人間同士が争い合うばかばかしさも、嫌というほど分かっている。
透明な水晶のように、不思議と気持ちが澄んでゆく。
明かりは結晶となって、自分の内側で輝いていた。
この心の明かりはどんな命令でも、消すことは出来ない。
たとえ王でも壊すことは出来ない。
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