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第四章:聖塔エ・テメン・アン・キ
この階段はどこまで続いているんだろう、と思いながらひたすら登る。
階段は一直線に、延々と続く長い上りになっている。
見た目よりきつい。
まるで山を登ってるみたいだ……。
いや、それより厳しい……。
私は聖塔エ・テメン・アン・キの階段を登っていた。
この塔は焼き煉瓦を積み重ねて、階層上になった神殿だ。
巨大な神塔の全長は百八十アンマトゥ。(約九十m)
長方形の箱を何段も重ねたように見える建築で、全部で七層になっている。
神殿の外側についた直線階段が、三層目のところまで続いていた。
その外壁の直線階段を、強い風に吹かれながら登っている。
一層目、二層目は休むことなく通り過ぎた。
すでに相当の高さまで登っている。
もしも足をすべらせたら、転落死は確実の高さだ。
それでも自分がいるのは半分ほどの地点で、塔の先端は遥かに高い。
隣を見ると、白髪に白い髭の老人が、ひょうひょうと階段を登っている。
この巨大神殿の長、エウル・アキン大神官だ。
老人は細い体に、白地に金の刺繍の入った大神官の衣を着ている。
ここの階段に慣れてるのだろう。
足の運びが軽くて早い。
背後に数名の若い神官達を連れているが、彼らも難なく登っている。
足元が危なっかしいのは自分だけだ。
神官の全員が、全体的に進むのが早いので、気を抜くと置いていかれそうで焦る。
階段に苦戦してると、エウル大神官に話しかけられた。
「ベルテシャザル殿は、今までここに登ったことはなかったのかね」
「はい。エ・テメン・アン・キへの昇殿はこれが初めてです」
それは本当だった。
ユダ国は一神教で、特に戒律で厳しく戒められているのは、偶像を拝むことだ。
偶像というのは、基本的には神像や、神のレリーフや絵も含む。
一方、数多くの神がいる神殿であるエ・テメン・アン・キには、マルドゥク神をはじめ様々な神の像が置かれている。
そういう理由で、私は滅多なことがない限り、異教徒の神殿に入ったりしない。
しかし、今朝は陛下から使いのものが来て、エ・テメン・アン・キに昇殿せよという命令が来た。
理由を聞きたいが、相変わらず、他の指示がない。
拒否権などない。
仕方なく、指示通り今日は初めてここまで来たのだった。
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