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はじまり:古代の都バビロン
時代は紀元前六世紀。
カスーム地方、シンアルの地。
今でいうメソポタミア地方のバビロニアのこと。
新バビロニア帝国、ネブカドネザル二世の治世の時代。
高い空に、流れる二本の大河があった。
チグリス河とユーフラテス河の流れる土地だ。
どこまでも続く大平原には、麦畑の穂が風にそよぎ、ナツメヤシの林が育っている。
人々は太陽と大河の恵みを受けて、素朴に暮らしていた。
日干し煉瓦の住居に住み、大麦を育て、家畜を放牧し、漁をする。
紀元前六世紀の当時のメソポタミア地域はまだ砂漠ではなく、水のあふれる緑豊かな土地だった。
豊富な穀物を求め、遠くの国からは商人たちが都を訪れた。
隊商を組んで、何十頭ものラクダやロバで荷車を引き、長い距離を越える。
貿易商人たちは、よりよい取引を求めて、王都を目指す。
古代の国際都市、バビロンへと。
バビロンは当時の人口が十万、世界有数の大きな都だった。
堂々とした門を抜け、高い城壁で囲まれた都に入ると、いくつもの王宮や聖塔、多くの神殿や民家が並んでいる。
都の中央にそびえ建っているのが、聖なる塔のエ・テメン・アン・キ。バベルの塔のこと。
人々の信仰を集めるマルドゥク神の大神殿であり、バビロンが誇る超高層建築だ。
土ぼこりの立つ通りの上を、一枚布を肩から巻いた服のバビロニア人や、異国の衣を着た雑多な人種が歩き、すれ違う。
大通りでは店が軒を連ね、市場では人々がにぎやかに商いをしていた。
串焼き肉を焼く香ばしい匂いが、店の軒先にただよっている。
かまどで焼いた丸く平たいパンを売る店もある。
沢山の編んだかごを背負い運ぶ者がいたり、大声で人を呼び、かごに入れた魚を売る青年がいる。
商人たちは店にきらびやかな装身具や織物を並べている。
また城壁の近くではラクダやヤギなどの家畜の取引場があり、多くの家畜の鳴き声の中、値の交渉をしていた。
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