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しっかりそれを聞くと、黙ってうなずいた。
その方針に反論はないし、それが一番いい方法に思えた。シンアも秘術のことは知っているのか、側で聞いてうなずいている。
いい聞かすように、エウル大神官は私に注意した。
「魔物の死骸や血には呪いがかかっておる。例えばバシュムはすさまじい毒蛇よ。神をも殺す毒が体内に流れておる。くれぐれも、魔物の血には触れないように」
「はい」
私はうなずいた。
でも、そもそも血が流れるほど蛇を傷つけるつもりはなかった。
「陛下の中の銀色の蛇はすごく綺麗でした。神秘的な輝きで、淡い燐光を放っていて……。何とかして話し合って、陛下の身体から出てもらえればいいのですが」
「ベルテシャザル殿は優しいのう。優し過ぎるとも言える。そこが心配じゃの」
大神官は微笑んで言ったが、同時に心配げだった。
「魔物が美しいのはよくあること。奴らはひどく狡猾。心してかかられよ」
部屋の中央から外れた少し暗がりのところで、王はよく眠っている。
それを少し離れたところから見て考えた。
彼が寝ている今こそ、もう一回意識に潜るチャンスなんじゃないだろうか。
潜るのはほんの少しだけでいい。
あの蛇の手がかりを掴めたら。
敷物から立ち上がり、自分の推測を二人に話した。
「もしかしたら夢渡りは、陛下の父王から渡ってきたのかもしれません。二年前の父王の死によって、即位と同時に陛下に渡ってきたとしたら。その前はどこにいたのか知らないですけど」
陛下を起こさないように小声で話しながら、計画を話す。
「もう一回陛下の精神に潜ってみます。何か手がかりがあるかもしれません。陛下を起こさないようにして、身体には触れず。少し離れた場所で、ごく軽く浅い術をかけてみたいんです」
寝ている王を背にして、少し離れたところに立った。
シンアと大神官に向かって、自分の戻りの補佐をお願いする。
「意識が戻る時、私の名前を呼んでください。そのほうが安定するんです。呼んでほしい名前は──……」
ダニエルです、と続いて言おうとしたときだ。
背後の真っ暗がりから、自分に向かっていきなり手が伸びてきた。
すごい速さで避けきれない。
後ろから、いきなり右の足首を強い力で掴まれて、死ぬほど驚いた。
突然のことに目を見開いて、慌ててしまう。
「え? うわ!」
指が食い込むくらい、痛いくらいの力で足首を握られて外せない。
振り向くと、掴んでいるのは寝ているはずの王だった。
床に這いつくばった姿勢で、手を伸ばしこちらの足首を掴んでいる。
(何で!? 眠っているはずじゃ……!)
私はうろたえた。全身にぞっと震えが走るような、ものすごく嫌な感覚がした。
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