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信じられない思いで呆然とした。
どうしてこんなことに!
街にはいつだって人口が密集している。
戦時中ならもっと人が増えて、都市の中は混乱の極みになっているはずだ。
今見ている間にも民が大勢殺されているだろう。
見ているだけで一気に血の気が引いて、気分が悪くなった。
衝撃のあまり手も足も震えてくる。
一番恐ろしいと思ったのは、エルサレムの城壁より高く敵側の塔が組まれていることだった。
城壁の周りには、同じ高さかそれ以上に高い土塁がいくつも築かれている。
数々の攻城兵器が、城壁の内側に火矢を射掛けていた。
「これでは、内側の人間は皆殺しじゃないか!」
籠城した場合、本来は籠もる側の方が有利で負けにくい。
だが城壁からの攻撃を無効化するような、このやり方には防衛側は苦戦する。
ただならぬ執念と殺意を感じるやり方だ。
敵側は、エルサレムを本気で攻め滅ぼしにかかっている。
容赦ない攻め方に恐れをなした。
降伏の余地はなかったのだろうか。
生きて逃げれる者はいるのだろうか。
ここからは遠目だけど、都市の中は盛大な地獄絵図だろう。
吐き気と寒気で、身体ががくがく震え始めた。
口を手で抑え、目を固く閉じて頭ごと岩場に伏せた。
嗚咽と震えがおさまらない。
狼狽している私に、蛇がなだめるように耳元で話しかけてきた。
『まあ落ち着け。これは未来の話よ。ユダを攻めているのバビロニアの軍……』
「え、ええ!? では攻め手はまさか」
『そう。都を攻めているのは、そなたが仕える王よ』
「陛下が!」
それを聞いて息が止まりそうだった。
そ、そんな事って!
心の中で何かが崩壊してゆく。
自分よりも大事な何か。
大切な者が、都市が、ぼろぼろになってゆく。
「嘘を言うな!」
ついに我慢できず、叫んで身を起こした。
蛇の首根っこを掴んで、岩場に叩きつけたくなった。
だが、その前に蛇は私の肩から逃げ、するりと手の届かない場所に浮かんだ。
少し高い場所から、こちらを見下ろして眺めている。
『嘘ではない。我は嘘は言わぬと知っているはず』
それを聞いて私は怒り、青ざめ、それからうろたえた。
「それなら陛下は……。彼は戦場のどこかにいる」
私はよろよろと立ち上がった。
王に会いたい。掴みかかってでも真実を知りたい。
嘘だと言って欲しい。何かの間違いであって欲しい。
破壊と虐殺、侵略を目の前にして、心がずたずたになりそうだ。
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