第一章:玉座の狂気

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 臣下達は一斉に立ち上がり、頭を下げ、胸に手を置いた敬礼の姿勢を取る。同時に、居並ぶ衛兵たちも姿勢を正した。  王は堂々とした歩みで中央の通路を歩くと、玉座に腰かけた。  その近くに、武装した近衛兵達が、槍を立てて並び立つ。  再び、臣下達はひざまずき、頭をたれて恭順の姿勢になった。  たくましい王は英雄ギルガメッシュの再来といわれるほどの美丈夫だ。  しかしその美貌は、今は暗く屈折した影を見せている。  目前の居並ぶ臣下達を睨みつけていた。 「皆ども、先日の命は知っているな。余の見た夢を当ててみせよ。それが出来なければ、王宮の知識人を全員処刑する」  そう言うと、彼は部屋の臣下達を睥睨(へいげい)し、玉座から立ち上がる。  あたりを見渡して、張りのある声で私の名を呼んだ。 「ベルテシャザルはどこにいる」  張り詰めた部屋の空気が、さらに一層凍ったような気がした。  床にひざまずいた、ひとりの青年……私に、皆の視線が集中する。  一方、私は自分の名を呼ばれて、心臓が跳ね上がる思いだった。  体は冷えてるのに、汗をかいている。  足が震えそうなのをこらえて、その場に立ち上がる。 「王よ、ここにおります」  やっとのことで、舌をかまずに自分で声を発した。  思ったより、上滑りしたような弱い声が出た。  王は私を一瞥(いちべつ)し、ねめつけるような目でこちらの全身をじっと見た。  私は十八歳になったばかりだった。  フワフワとしたくせ毛の茶色の髪に、書記学生めいた、生成りの簡素な服。 きっと王の眼には、人畜無害そうな色素の淡い青年が見えていることだろう。  自分はまるで、人身御供だと思った。  強大な魔神に、提供されるためのいけにえ。  怒りを鎮めるために、御前に放り出される若者…。  玉座に座り直し、見下すように王が言った。 「お前が国一番の夢解きをするという話だったな。その腕を見せてもらうぞ」 「はい」
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