第十三章:崩壊

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 殴られも蹴られもしなかったが、それ以上の勢いで罵倒された。  部屋の空気がビリビリ震える。  その本気の叱責の激しさに、度肝を抜かれた。 「表の警備は何をしていた! 衛兵、今すぐここに来い!」  王が大声で呼ぶと、四人の武器を持った兵士が、すごい速さで扉から駆け込み、部屋の中に飛ぶように現れた。  その衛兵達の殺気立った剣幕にもびっくりした。  彼が床にいる私を指差し、指示を出す。 「取り押さえろ。こいつをここから連れ出すんだ」  一人の兵に強く肩を押さえられ、もう一人の兵士に背後から両腕を取られる。武器を隠し持ってないかどうかの調べも急いでされた。  じたばた暴れたが、強い力で抑えられて振りほどけない。  懸命にわめいた。 「ちょ……離してくださいよ!」  彼は腕を組み少し離れたところから、兵達と私の様子を見ていた。再び叱責する。 「だめだ。いいから何も見ずにバビロンの都に帰れ! 何も見るな! この屋敷だって機密だらけなんだぞ。密偵の疑いをかけられたいのか!?」  ああもう!  聞きたいことはたった一つなのに!  兵に引きずられて、部屋の外に出されそうになりながら私は叫んだ。 「ユダの町をバビロニア軍が侵略していて……。どうして!」 「エルサレムの包囲を見たのか」  うめくように王に問われ、真剣な顔で頷いた。  彼は深いため息をつき、苦々しく顔をしかめると片手で顔を覆った。 「最悪だ……。あれはこの世で一番お前が見たらいけないものだぞ」  必死になって彼に訴えた。 「どうして陛下がこんなことを! ユダの国を攻撃するなんて止めてください!」  それを聞いた王は私を険しい目つきで睨みつけた。  手で握りこぶしを作ると、近くにある(パッシュル)を思い切り叩き、強い口調で言う。 「ユダ国の王が、協定を破棄してエジプト(ムツリ)側に寝返ったんだ! よりによってエジプト(ムツリ)だぞ! 俺にだってどうしようも出来ん!」  裏切り……!  ユダ国が新バビロニアを裏切った……!
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