60人が本棚に入れています
本棚に追加
第二章:夢解き
しんと静まり返った王の間にて、私の夢解きが始まった。
「陛下、あなたのご覧になった夢は、こういったものでしょう……」
言いながら、意識を集中させて、祈るような思いで話し始めた。
部屋中の誰もが息を呑み、話を聞いている。
解釈に没頭し始めると、意外なくらい、すらすらと言葉が出た。
無心に行うせいか、自分ではあまり話した内容を覚えていない。
「このように、いと高きものが未来のことを、陛下に知らされたのです──……」
時間にすると、そう長くはない。
いつの間にか、私は夢解きを話し終えていた。
ふと現実に意識が戻り、目が覚めるように我に返る。
王も部屋中の臣下達も、驚いたように私を見つめていた。
心配になった私は王の反応が気になった。
成功か、否か。
肝心の男は低くうなると片手を顔に当てて、脱力したように王座に座っている。
手で影になって、表情が見えない。
しかし、先程まで身にまとっていた怒りや毒気の気配は、抜けたように見えた。
身分差のしきたりで、王には問われない限り、臣下から声をかけてはいけない。
(うまくいったのかな……)
急に不安になり、一秒が長く感じてじりじりする。
疑問はあったが、私は何も言えずに王をうかがった。
彼からの返事は何もない。
長い沈黙に、部屋の者達も少しざわつき始めた。
うなだれた王は、声を絞り出すように言った。
「処刑は取りやめる。皆、下がれ」
部屋中の誰もの、安堵の息を吐く音が聞こえてきた。
私もまた、肩の力が抜けたが、彼の変化は気がかりだった。
王はうつむき気味に目をそらして、王座から立ち上がった。
「ベルテシャザル、お前もだ。下がれ」
そう言って席を立つと、黒いローブをひるがえし、足早に入ってきたときの大扉へ向かう。
誰のことも振り向きもせず、王の間から去っていった。
音を立てて大扉が閉まる。
数名の近衛兵が、慌てたように王を追いかけ、別の出入り口から退出していった。
最初のコメントを投稿しよう!