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亡き友の歌
地面を見ていたはずなのに、足元に満点の星が広がっている。
そうして上を見ると、砂浜に向かっていくつもの星が落ちてきた。
その後ろで、大きな大きな月がぼぅっと浮かんでいて
それはとても綺麗なのだけど
東の方は、淡い青に侵食されていた。
夜が、犯されていく。
そう表現したのは、僕の熱烈な夜に対する愛の現れだ。
夜と空と海と砂浜と僕を隔てていた何かが、崩れ去っていく。
風が、風が、風が...
ふっと僕の、世界の、僕らの意識が奪われていく。
誰に?
それは誰にもわからない。
でもそうして僕たちが誰でも無くなってしまった時
境界線がゆらゆら揺らいで、僕は、涙を流した。
そうして私の中にある何かが囁く。
「これで、おしまい?」
エンドロールは流れ始めている。
それでいいのだろうか。
最後のシーンが泣いた男の哀れな姿なんて、誰が喜ぶのだろうか。
でももっと大切で
もっと悲しくて
もっと真実味の溢れる言葉に、僕は心を呼び覚まされる。
「歌おう、ロマンチックだから」
そうして僕は加速していくブルースを、涙も拭かずに歌い出す。
エンドロールはなおも流れ続けているのに、終わりは酷く
遠く遠くにあるような気がした。
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