受話器に愛をささやいて

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 激しく濡れた私の髪や肩先を見て、彼は眉を下げた。瞳の色から心配されていると分かった。  密室すぎる密室が恥ずかしくて、私はできるだけ彼と距離を取り、意味もなく外を見つめた。  真っ白な飛沫が今もこの空間を包んでいる。  バラバラバラと打ち付ける雨音と濁った外の景色とで、まるでここだけが切り取られた別世界みたいだ。  私は肩に掛けた鞄の紐を左手で掛け直し、入る前から手にしていたスマホにキュッと力を入れる。  ハァ、とため息がもれる。  彼は学校帰り、なのだろうか?  半袖のシャツにネクタイを緩くしめた制服が目に眩しい。  着ている制服は弟の翔琉(かける)と同じ高校のものだが、何故か彼が着ると別の衣服に見える。  シャツの袖からニョキっと伸びた二の腕に男の子特有の筋肉を感じて、若干頬が熱くなる。  ーーそういえば。濡れてなくない……?  全く濡れた素振りの無い彼を再度一瞥して、ゲリラ豪雨にあたる事なく避難できたのだと推測する。  彼は「あ、」と声を上げてしゃがみ込み、地面に置いたスクールバックをガサガサとあさった。
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