お兄ちゃんの手

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隣の家の下敷きになっていた私は、痛くて、辛くて、泣きそうだった。 でも、私は兄のことを思い出した。 兄は私より都会にいる。そっちの方が危険なのではないか。 そう思ったら、私の行動は早かった。 痛くて辛い思いを我慢し、瓦礫を何とか押しのけ立ち上がった。 そこに広がっている光景は 真っ黒。 火が燃え、真っ黒い煙が辺り一面を囲っていた。 私は怖かったが、それよりも兄が心配だった。 私は、自分の家まで走った。 はしって、はしって、走った。 走っている途中、なにかグジュっとしたものを踏んだ。 最初は少しだったからあまり気にならなかったがあまりにも多すぎるのでさすがに気になった。 下を見ると、たくさんの人が水をくれ、水をくれと私の足を手で止めようとした。 私は兄のことで頭がいっぱいで、本当に酷いことをしてしまった。
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