エピローグ

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 ――懐かしい高校時代。  みんなと共に過ごした青春。  伸は私に視線を向け、大きく手を振った。  ――私は、思い出していたよ。  深く傷付いた伸は……  私に言ったよね。  ――『星良は笑顔が一番似合う。俺の前では、笑っててよ。頼むから、笑ってて……』  今にも泣きそうな顔で、私を見つめた伸。  何度も挫折を繰り返し、それでも夢を追い続けた。  共に目標を定め……。  共に目標に向けて……。  前だけを見つめ、夢中で走り抜けた青春。  切なくて……。  苦しくて……。  決して平坦な道ではなかったけれど。  それでも私達の未来は……。  希望に溢れていた。  あの時の熱い想いや純粋な気持ちは、大人になった今も、私達の心の中に深く刻み込まれている。  それは永遠に……  色褪せることはない。  ――『星良、俺達も撮らない? 桜の木をバックにさ』  青凛高校の卒業式、桜の木をバックに記念写真を撮ったね。  ――『まだ蕾だよ』  ――『蕾だからいいんだよ。俺達の夢はこれから咲くんだ。この桜の花みたいにな』  二人で桜の木を見上げた。  携帯電話を取り出し、伸と頬を寄せる。  小さなシャッター音。  伸は制服の第二ボタンを引き千切った。  ――『それ、俺だから。星良の傍にずっといるから』  卒業式の日に桜の木の下で交わした約束。  小さな恋の蕾はゆっくりと花を開いた。  ――きっと、ずっと……。  私は伸の傍にいるよ。  伸も私の傍にいてね。  伸にもらったリングを……。  私はそっと……左手の薬指につけた。      ―THE END―
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