1450人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
校舎とグラウンドまで距離はあるから、教室の中まで月野先生の声は聞こえないけど、月野先生が伸を呼んで注意しているのはわかる。
月野先生……。
カッコイイね。
笑った顔も……。
怒った顔も……。
照れた顔も……。
教壇に立っている時も……。
部活の時も……。
いつだって、月野先生は夜空を照らす月みたいに物静かで、キラッと輝いている。
月野先生……
ダイスキだよ……。
伝えたいけど……。
伝えられない……。
私の……キモチ……。
「星良。もう凌賀を見たから気が済んだでしょう? 駅前で抹茶ソフト食べようよ」
「あっ……うん。いいよ」
別に伸を見ていたわけじゃない。
でも玲子は完全に勘違いしている。
私の鼓動は大好きな月野先生と視線が重なっただけで、まだドキドキしてる。
いつも月野先生を見ているけど、月野先生が私を見てくれるなんて、滅多にないからだ。
あと三ヶ月で三年に進級する私達。
月野先生が三年の担任にならないかな。
このまま月野先生に告白できなくてもいい。月野先生と同じ学校にいられるだけで幸せだから。
私は机の横に掛けていた鞄を手にとり、玲子と一緒に教室を出た。
グラウンドを横ぎると、サッカー部も練習が終わっていて、雪の降る中、冷水で伸がバシャバシャ顔を洗っていた。
うわっ……寒そうだな。
顔が氷みたいにバキバキに凍りそうだよ。
伸はまるで犬みたいに、ブルブルと顔を左右に振る。その動作で顔に付いていた水滴が私に飛び散った。
「きゃあっ! 冷たいな!」
「あっ、ごめん。ちょうどよかった。星良、ハンカチ持ってない?」
「ハンカチ? あるけど……」
「タオル忘れたんだよ。ハンカチ貸して」
伸は濡れた手を私に差し出した。
寒さと水の冷たさで赤くなった指先。
凍える手を差し出すなんて狡いよ。
ハンカチを貸さないと、私が冷たい女に見えるでしょう。
最初のコメントを投稿しよう!