③もう痛くないように

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 2人は魔法で耳を隠した「ヒト」を病院へ運んだ。  もちろん医者には訝しがられた。 15・6歳程度に見える二人が運んできたズブ寝れ・全身傷だらけの、しかもまるで拘束服の様な衣に身を包まれた患者を見てそうならない方がおかしい。  「ほんとに家族ですか?保健証は?ご両親を呼んで……」 そこまで言って、医者が話を止めた。 そして一瞬項垂れたと思うと急に愛想が良くなり「ええと、はい、すぐ入院しましょう」と態度を変えた。  ふと気づくと、神楽の左目が光っている。 吸血鬼の「惑わし」の能力を使ったのだ。 出会ってから一度も使った事の無い魔力を出した事にホノンは驚いた。 (何か気になる事が神楽にあるのかしら……) ★★★  看護師の話から犬耳の「ヒト」は少年である事がわかった。 身体を綺麗に整えられた彼を見ると、まだ幼さの残る表情をしている。 なのに、どこか寂しげで疲れた様子が寝顔でも見て取れた。  「患者さんのお名前とか分からないんで、後で書類をお願いしますね」 看護師が入院に必要だと何枚かの用紙をホノンに渡した。  「名前かあ……聞かないとわかんないね。それより神楽、私は一度帰ってから入院に必要な物を取ってくるから神楽はこの子を見ててあげてくれる?」  「え?僕が?大丈夫かな?」  「うん。神楽なら大丈夫よ。それに神楽もなんだかこの子をほっとけない気がしたから」  「……うん、なんだか気になるんだ……。わかった。任せて」 神楽が大きく頷く。  ホノンはニコッと笑うと、急いでアパートへと戻った。
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