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**約200年前**
ホノンは魔界を統治する王に代々仕える血統の家に生まれた少女であった。
幼い頃から何の疑問もなく、魔王を崇拝する教育を受けてきた。
しかし、王立魔族最上学院を受験する事になりだんだんと閉塞感を感じるようになる。
魔界とは言え大半の人間は魔王とは直接関わりのない暮らしをしており、ちょうど人間界で例えると魔王は総理大臣的なポストである。
また、魔族学院は魔王に仕える一級魔導師の育成を目指す学院であり、ホノンの周囲の子供達でここに進学希望をする者はごく僅かで、いたとしてもほぼ男子だった。
(みんなは放課後に集まって遊んだり、話すこともテレビや漫画の話……入れない……私だけどうして育成塾に行かなきゃだめなの……)
ホノンは出来ることなら「普通」の子供になりたかった。
自分の好きな事、やりたい事に一日中時間を費やしてみたかった。
けれどこの時は齢12。
両親に逆らえる程の魔力もなく、ホノンは勉強だけの毎日に耐えて受験当日を迎える。
そうして出会ったのが……。
「どうした!?死にそうな顔してるよ!豆乳あげよっか?」
芋くさい緑のジャージにボサボサのお団子頭、底抜けに明るい笑顔。
この魔導学院には多種多様な学生がいるのは有名だが、受験当日の緊張感を破るようなその存在がホノンの心を軽くしたのは間違いない。
ホノンは初対面のこの少女に自然と自分の心の内を打ち明けた。
すると少女はどこまでも明るく言い飛ばした。
「良くわかんないけどさあ。楽しく考えた方が得じゃない?ここまで来たんだから気楽にやろうよぉ。
それにさ、学院で学んで力がつけば魔王に意見する事も出来るんだよ~。
はるさんはさあ、強い魔導師になってこの魔界をパリピでいっぱいにするのが夢なんだあ!」
言ってる事はめちゃくちゃだが、その考え方はホノンの心を照らした。
(そうか。自分が強くなれば世界を変えられるかもしれないんだ。それに、こんな私でも誰かを照せる光になれるかも……!)
ホノンは大きく頷き、試験会場に入るために足を踏み出したが、ふっと振り返った。
「あ、はるさん、て言うんですか?」
「うん、流って書いてはるだよ!よろしくな、ホノンちゃん」
「え?」
なぜ名前を知っているんだろうとホノンが首を傾げると、流はまた大きく笑って受験票を指差した。
「ああ、これを見たのね。ふふっ。
……じゃあ行ってきます!受かったら友達になってね」
ホノンは元気に手を振った。
残された流はまたさらに笑顔になって呟いた。
「もう、友達だよ」
かくしてホノンは魔導学院に入学し、流と親交を深めた。
そして
物語は大きく動いていく━━━━━━━
流https://estar.jp/novels/25657502
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