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「やっぱりおかしいと思う」
魔法学院に入学してから三年後、ホノンは流に言った。
「 なぁにがぁ?」
流は多種の風味の豆乳が入ったクーラーボッスから抹茶味を取り出しながら答える。
「魔王だよ。独裁政治過ぎない?許せないよ」
ホノンは精神的にも潔癖な部分があり、魔王が裏で汚い手を使って魔界を統治しているのが許せなかった。
(あんな大人にだけはなりたくない。王の周りの側近だって、税金で胡座をかいて、国民の事なんて考えてない)
「私は暴動を起こすわ!」
ホノンは拳を握り宣言した。
聞いていた流は口に含んでいた豆乳をブワッと吹き出し咳き込む。
「え、ええ~!ホノンちゃん、何言ってんの。ゲホ。まだ学生のうちらじゃ無理だよ。ゴホ。しかもホノンちゃん、戦闘魔法より癒し魔法が得意なんでしょ?ケホンケホン。
魔王一派と戦えるわけないよ~」
「ううん。わたし、今まで言われるがままの人生だった。たった15年しか生きてないけど、いつか決意しなきゃならない事があるって思ってた。それが今だと思う!」
熱くなってしまったホノンはもう誰にも止められない勢いだ。
「ねぇ、流ちゃんも手伝ってくれるね!?」
「ふはぁ!?流さんがぁ!?」
思いも寄らない巻き添えに驚いた流だが、
実は彼女、17歳には見えるが現時点で生まれてから50年近くになる不老不死体質であった。
時が止まった17歳の姿で、気楽に楽しめる学生を何度も繰り返していたのである。
しかし、実の所そんな呆けた生活にも飽き飽きしていた。
もしかしたら自分は変化を求めていたのかもしれない。
(魔王と闘う。面白いかもしれない。人生、何でも楽しんだ方がいいじゃん)
流はニヤッと笑うとホノンを真っ直ぐに見た。
ホノンは初めて見る流の真剣な顔に無意識に背を伸ばした。
そして語られた流の体質の秘密、そして魔王と戦う同志として立ち上がる意思を聞いたのだった。
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