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【黒い猫の怪】
自殺の名所と呼ばれる砂浜があった。
そんなこととはツユ知らず、潮干狩りに来た僕とお父さんは、その異様なまでの人気の無さを喜んだ。
「やった!貸し切りみたいだ!」
「よし。早く掘ろう!」
僕とお父さんは砂浜を掘りまくった。
しかし、アサリどころか、何も出てこない。
「おかしいな〜。」
「なんか、生き物がまるでいないね。カニとか、そんなのも。」
ブツクサ言いながら掘っていると、
「うわっ!」
と、お父さんが声を上げた。
「やった!貝、あったの?」
僕はお父さんのところに駆け寄った。
お父さんは、掘り出した貝を手に持ち、不思議そうに見つめていた。
「なんだろう?この貝。」
見たことない形の貝だった。
そして、色が気味悪く真っ黒だった。
「なんだろう?」
「真っ黒だな。」
「気味悪いね。」
「本当に。」
そうやってお父さんと話していると、いきなり背後に何かの気配が現れた。
振り返るとさっきまで誰もいなかったのに、おじいさんが立っていた。
驚いたお父さんと僕が何も言えずにいると、そのおじいさんはお父さんの持っている貝を指差してこう言った。
「黒いね〜、この貝。」
ー【黒い猫の怪】おわりー
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