妻の財布

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「ん~なんていえばいいかな…」 妻は少し考えてから 「これは、お守りなの」言った。 そう言いながら再度ぼくに名刺を渡した。 再度その名刺をみた。 「やだ、まだわからないの?これは私の父の名刺だよ。」 たしかに、この名前は妻の父親の名刺だった。 「でも、財布に入れるの? 確か父親と仲が悪いって言ってなかったけ?」 「そうなんだけどね、一人暮らしするときに保証人になってくれる人いなくて お父さんに頼んだの、その時に『何かあったらいつでも連絡をしなさい』って名刺を渡されたの。 何かあった時に頼っていいんだって思ったら嬉しくて。それで今も一応もってるんだ。」 そう言いながら、新しい財布の奥に名刺をしまい込んだ。 もちろんぼくは名刺を見たときに、妻の父親だとすぐに気が付いた。 妻の父は7年前に亡くなっている。 その名刺を大事に持ち歩くだけ、父親の関係性がよかったと安心した。 ぼくは、妻に自分の名刺を渡した。 「え?なにこれ?」妻は驚いて言った。 「何かあった時に頼れる人は何人いたっていいだろ。」そう言って渡した。 「なにそれ!でもありがとうね!」 そう言いながら、僕の名刺も財布の奥にしまわれて言った。
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