受賞の理由

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「え?」 「この、戦闘シーンのさ、『激しく続く鍔迫(つばぜ)り合いの金属音が止んだ、その刹那、彼の背後で血しぶきの紅い花が咲いた』っていう描写だけど、こんなの君の作品の読者層が理解出来ると思ってんの? これだったらまだ元の『キンキンキン。ズバッ』の方がよっぽどマシだよ」 「……」  やっぱり、そういう評価になるのか……  ぼく自身も最初は擬音だけで済ませてもいい、むしろそういう作品の方が売れてるんだから、と思ってた。だけど、ぼくのフォロワーの「徳田 鏡花」さんの作品を読んで……ぼくはとてつもない衝撃を受けた。そして、自分の文章が恥ずかしくてたまらなくなってしまったのだ。  徳田さんの文体は、とにかく美しい。独特な比喩表現に、簡潔だけど情感たっぷりの描写。とてもぼくには真似出来ない。  徳田さんとぼくはシャケトワールの中で仲良く交流していた……つもりだった。だけど、徳田さんがシャケトワール小説大賞に応募していた小説は優秀作品に終わった。つまり、入賞すらしなかったのだ。ぼくは最優秀賞になったというのに。それ以来、なんだか彼とのやりとりがギクシャクしてしまっているように感じる。
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