2.男。

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2.男。

 部屋に置かれた、一組のテーブルと黒い革張りのソファー。  目立つ物といったら、それくらいだろうか。    無駄な物がなく、生活観の感じられない部屋は、洒落たバーのようだった。  壁に()め込まれた銀色のドアも、そう思わせる要因の一つだろう。  派手な艶はなく、出来損ないの鏡のような色をしている。厚みがあり、重々しい姿は、部屋のドアというよりも、冷凍倉庫の扉を想像させる。    音や光、温度だけでなく、わずかな空気さえも通さないという、強い意志が感じられた。
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