1.愚。

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1.愚。

 人間は、死んだ者に対する想像力は豊かなのに、生きている者を見る目は節穴(ふしあな)だらけです。  死んだ人間が、天国で見守ってくれている? 喜んでくれている? 笑ってくれている? ……実に、優美で幻想的なお考えですね。  しかし、そんなものは(のこ)された者の願望でしかありません。人間は、死んだら終わりです。現在(いま)はありません。    一秒後、明日、未来は訪れません。  死んだ人間の、現在の想いを想像すること。私からしたら、そんなものは愚行(ぐこう)です。  遺された者が後悔を和らげるため、自分に都合のいいよう事実を()じ曲げているだけにすぎません。    実に愚かな行為ですね。  死んだ人間が、あなたを見守ることも、あなたをどうこう思うこともありません。    生きている時が、全てです。  それならば、まだ生きている今、目を向けてみてはいかがですか?   あなた自身が後悔しないように。     そして、大切な人が、死を選ぶ必要がないように。
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