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「こんにちは、今日から河石さんの家庭教師をすることになった早見怜真です」
早見先生は黒髪・黒縁眼鏡で、服装は地味。
大人しめで優しい雰囲気の大学生だった。
一般的には、目立たないただの通行人A程度だろうが……。
私にはキラキラと輝いて見えていた。
すごくドキドキする……。
緊張とは違うこの感覚……。
こんな経験は初めてだった。
私、河石桃果は高校3年になったばかりの春、家庭教師の男性に恋をしてしまった。
「——桃果、なにボーッとしてるの? ちゃんと挨拶しなさい」
「あ、うん……はじめまして、河石桃果です」
私はお母さんに注意され、慌てて頭を下げた。
その勢いでメガネがずり落ちる。
早見先生の前で注意されたことが恥ずかしくて、顔が熱い。
「先生ごめんなさいね。この子、人見知りがひどくて」
「気にしていませんよ。僕も初対面の時は緊張してしまいますから」
早見先生はニコリと私に笑いかける。
それを見て、私の体の熱は一気に上昇した。
「桃果、部屋へ案内してあげて」
「うん。先生、2階へどうぞ」
私は緊張していたせいで小さな声しか出せなかった。
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