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いちごパフェ
「お待たせしました。アールグレイにいちごパフェになります――」
翌土曜日の時刻は十五時。
店員がおれのまえに紅茶のカップ。香枝の前に背の高いいちごパフェ入りのグラスを置く。――店員が去ったのを見計らっておれは二つを取り替える。それを見てくすくすと香枝が笑う。
「なんで毎回間違えられんだろうなあ」と、おれはぼやきつつ柄の長いスプーンを手に取る。
「仕方ないよ。清司みたいに長身で強面の男のひとがパフェ食べるなんて思わないよ普通」
笑いをこらえつつ紅茶を口に含む香枝。――彼女は意図的に甘いものを頼まないようにしている。ダイエットをしているためと、おれのこの反応を面白がっているゆえだ。
因みにおれは別に香枝にダイエットが必要だとは思わない。会うたび香枝を抱いているが、彼女のからだは細いほうの部類に入る。
「食べる?」
「ううん別にいい」カップを置き、頬杖をついて外へと視線を投じる香枝。窓際の席が空いていてよかった。憂い気な彼女の顔を、存分に眺めていられる。
おれの好物は、甘いものだ。
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