無糖炭酸水 *

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無糖炭酸水 *

「――ん。駄目、清司……。声、出ちゃう……」  それでもおれは追撃の手をやめない。  その日の午後十六時。  汗ばんだ乳房の柔らかさを堪能する。「駄目。駄目ってば」といくら香枝に言われようとも。――この楽しみを奪われてはセックスの楽しみなど半減してしまう。  おれは、ゆっくり、彼女の上体を倒す。両手をベッドのヘッドボードのほうへと伸ばした彼女は、顔を傾け、声を押さえるべくシーツを噛みしめる。髪が揺れ、なんとも扇情的だ。おれは、彼女の表情を楽しみながら、スピードを緩めて、彼女を愛す。  こんな壁の薄いところに住むほうが悪い。和室に無理矢理カーペットを貼って洋室に改造した築二十年以上のアパート。正直、いい趣味とはちょっと言い難いが、住み心地よりも利便性を彼女は重視したらしい。実際、この場所で七万で住めるところはそう見つからない。
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