1057人が本棚に入れています
本棚に追加
本編・野間清司/炭火焼肉 *
「――ね、清司(せいじ)。お肉追加していい?」
金曜日の時刻は二十時。
目の前の彼女はそう言い、おれに笑いかける。答えは火を見るより明らかだ。おれはすかさずメニュー表を取ってやる。「鶏塩とホタテの塩が食いたいな」とリクエストすることも忘れずに。
「あ。いいかも。ハラシオも行っとく?」
「――ああ。香枝(かえ)が食いたいもんでいいよ」
すいませーん、と手を挙げて彼女は店員を呼ぶ。大学生らしき男の店員が、呼ばれたときになんだか嬉しそうな顔をしていたのをおれは見逃さなかった。――冗談じゃない。
香枝はおれだけのものだ。
最初のコメントを投稿しよう!