1話

1/2
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

1話

絆創膏を貼った首に手をあてさする。アイツが思いっきり噛んだおかげでヒリヒリと痛みがとれないからだ。1回だけあまりの痛さに我慢できずに治癒してもらったがあれまもう二度と嫌だ。首を気にしつつ1限目の講義室の扉を開いた。中に入ると既に多くの学生が席に座っていた。着いたのがギリギリだったため前の方には行かず空いていた1番後ろの席に座った。鞄から荷物を取りだしていると肩を叩かれた。振り返ると柊真(とうま)がいた。深草柊真(ふかくさとうま)は大学に入ってからの付き合いで偶然講義が重なることが多く仲良くなった。 「おはよう。珍しいな朔(さく)がギリギリにくるなんて」 「寝坊して」 失敗してしまったとなんとか誤魔化そうな笑みを浮かべていると柊真は妖しげに微笑み 「ふーん。そうなんだ。俺はてっきりこの首の奴が原因かと思った。」 少し前かがみになり俺の耳元で絆創膏に触れながら呟いた。驚いて思わず柊真を見ると絆創膏からぱっと手が離れた。 「冗談だよ。」 それだけ言うと柊真は隣に座り講義の用意を始めた。講義の始まる音を遠くに聴きながらバレないように汗を拭うのだった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!