瞳の中の彼女

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繁華街の一角にあるペットショップ。 彼女は店内にあるベンチの、一番端に座っていた。 本来ならペットの購入を考えている客が、仔犬を抱っこするための場所だ。 ボクは随分長い間この店にいるが、到底、彼女がペットを迎え入れようとしているとは思えなかった。 ここ一週間で五日も来店しているが、店員に話しかけるどころか、仔犬を吟味することすらしない。 ただ、俯いてその場所に座っているだけだった… ボクの目に映る彼女はどこか寂しそうな顔をしているように見えた。ボクはこのペットショップで唯一落ち込んだ暗い顔をしている彼女に惹かれていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この女性が初めて来店してから五日目… ついに僕は彼女に声をかけることにした。 「気に入ったワンちゃんはいましたか?」 女性に対していつも使っているありきたりなセールストークで話しかけた。 「大丈夫です…」 女性は小声で僕の質問に返答した。 ただ見に来ただけのお客さんも多く来るペットショップではよくあることだ。 本来、販売員なら、買う気もないこの女性の接客は、これで終わらせるべきだろう。 しかし、どこか落ち込んだ様子で俯く女性客が気になり、強引にセールストークを続けた。 「そんなこと言わずに!最近よく来店されて ますよね?とりあえず抱っこだけでもいかがですか?」 「みんな元気いっぱいでいい子たちばっかりですよ!」 あまりにしつこく僕が話しかけていたせいか、女性はついに折れて自分の目の前にあるショーウィンドウを指差した。 「じゃあ…この子お願いします…」
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