瞳の中の彼女

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女性客が指差したショーウィンドウには、 まもなく生後11ヶ月になろうとしている オスの黒い柴犬がいた。 犬で生後11ヶ月といえば、もう立派な成犬であり、 言い方は悪いかもしれないが、簡単に言うと売れ残りである。 「柴犬ちゃんですね!連れてきますので少々お待ちください!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 僕は女性の許可を得て、柴犬を膝の上に乗せた。 「もうすぐ一歳になる子で、とても頭が良くていい子ですよ~」 僕はありきたりなセールストークを繰り広げながら 話を繋げようとしたが、女性は俯きながら犬の背中を撫でるだけで、なかなか話を返してくれなかった。 「最近よく来られてますけど…大丈夫ですか…? 何か辛いことでも…?」
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