瞳の中の彼女

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余りの沈黙と気まずさから、思わず女性客に対して プライベートな事を聞いてしまった。 「あっ…ごめんなさ… 「実は最近…飼っていた犬を亡くしまして…」 謝ろうとした僕の言葉を遮り、彼女は話し始めた。 聞くところによると飼い犬を病気で亡くしてこの店に来て仔犬を見ていたのだとか…いわゆるペットロスというやつだ。 「でも…亡くなった子の事が忘れられなくて… また亡くすのが怖いから、もう犬を飼うのは止めようと思ってるんですけど…つい仔犬を見に来ちゃって…」 返す言葉が見つからなかった。さっきまで以上に重たい空気が流れる。 気まずいし、買わないと分かった客にこれ以上時間は割けないと思い、適当に話を終わらせて柴犬を引き取ろうとした。 その時、先程までは女性の膝の上で大人しくしていた柴犬が急に元気いっぱいに暴れだした。
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