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4.娘の推理
「簡単……だと? おい則子、オメェ、この謎が分かったって言うのか?」
「謎って言う程のことかな、これ?」
則子の言葉はやや挑発的だが、本人の表情にそのような色は見えない。
どうやら、本当に「何で分からないの?」と不思議がっている様子だった。
「あのね、お父さん。いくつか確認するね?」
「お、おうっ」
「まず……佐藤八郎さんの携帯電話は、家に置きっぱなしだったんだよね?」
「そうだな。自分の寝室に置きっぱだったらしいぞ。それがどうした?」
――そう言えば、携帯を家に置いていったことについて、佐藤八郎に詳しい話は聞いていなかった。
そんなことを思い出しながら、則子に先を促す。
「次にだけど……佐藤千香子さんが襲われた時、着ていたのはパジャマとか寝間着なんかだったりしたのかな?」
「おう、よく分かったな。なんでも、被害者は夜は早く寝ちまう習慣だったらしいぞ」
被害者は自室で寝ていたところを襲われたらしく、ベッド付近に血痕が発見されている。
……しかし、安藤はそのことを則子に伝えていない。何故「被害者が寝間着だった」ことが分かったのだろうか?
「次は……そうね。佐藤八郎さんは、お医者さんにお酒を止められてなかった?」
「あ~、どうだろうな。被疑者でもないんで、健康状態やら通院歴は調べてないな」
「あらそう。……じゃあ、これはどうかな? 犯人はもしかして、佐藤さん家に玄関から堂々と入ったんじゃない?」
「っ!? おい、なんで知ってるんだ? 俺、そんなこと一言も言ってないよな?」
則子の言う通り、犯人の少年は佐藤家に玄関から堂々と入っていた。なんでも玄関の鍵が開いていたのだそうだ。
恐らく、八郎がかけ忘れたのだろう。
「ああ、やっぱり。じゃあ、リビングの窓は、犯人が逃げる為に開けた……で合ってるかな?」
「おいおいおい、その通りだが、なんで分かった? それも教えてないぞ」
犯人の少年は、被害者が玄関の方へ逃げて助けを呼んでしまった為、リビングの窓を開けて反対方向へ逃げたらしい。
しかし、その事実も則子には全く伝えていない。
「ちっちっちっ! 簡単な推理だよワトソン君。『お父さんが』って言葉の意味が分かれば、後は芋づる式に連想できるわよ」
「はぁ~、まさかこんな身近に名探偵サマがいたとはな! で? 『お父さんが』って言葉は、一体どういう意味だってんだ?」
「ええっ!? お父さん、まだ分からないの?」
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