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その夜、家で楝姫にもらった太刀を枕元に置いて寝ている豊雄を見て、兄の太郎が不審に思う。金銀ときらびやかで、武士が身につけていそうな太刀を一体どこで手に入れたというのだろうか。盗んだに違いない!
そう思いすぐに両親に伝えると、両親は翌朝早くに大宮司の元へ勝手に太刀を持っていき相談する。すると、大宮司が大官に送った神宝だというから驚きだ。いくつも送ったが全て盗まれ行方知れずになっていた。
すぐに役人が豊雄の元にやってきて連れて行くが、身に覚えがない豊雄は楝姫という女性からもらったと必死に訴え、その屋敷に向かうことになる。
役人と一緒に楝姫を訪ねた豊雄は、驚きのあまり目を丸くした。何とあんなに立派だった門は荒れ果て、屋敷の瓦は割れ、壁も無残に崩れ落ちていたのだ。
それでも奥へ進んで行くと、屋敷内は外よりももっと荒んでいたが一人の女性が見えた。豊雄は役人に向かって、
「彼女が楝姫です!」
と叫んだ瞬間、楝姫に青い雷が落ちてパッと姿が消える。すぐに側に寄るが影も形もない。
みなは驚き、先ほどまで楝姫がいた場所辺りを隅から隅へと調べて回ると、盗まれたはずの神宝、狛錦、呉の綾、倭人、盾、槍、鍬などだけ残っていたので、豊雄の証言が事実だと証明されたのだった。
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