36人が本棚に入れています
本棚に追加
25/30 お互いを見つめる
「この顔のどこに惚れたんかなあ」
まじまじと、改めてリョウが不思議そうに呟く。それを聞いてもアヤは薄ら笑いを浮かべたまま黙っている。
元々、リョウの好みと言えば、華奢で小柄で大きな瞳の、思わず守ってあげたくなるようないかにも可愛らしい子。色が白ければ尚よし。つまりアヤは好みからほど遠い。
「アヤだってそうやろ?この顔のどこに惚れたん」
ちなみに、アヤの好みも同じである。つまりリョウは好みからほど遠い。
本来互いに惚れるはずのない相手と恋に落ち、今付き合っている。
「さあ、どうしてだろうね」
リョウは何度となく、どこを好きになったのか、とアヤに訊いているが、いつもはぐらかされてしまって答えらしい答えを聞かせてもらったことがない。
「顔じゃないことは確かだろうね」
「悪かったな」
頬を膨らませて睨むリョウ。アヤの目がますます細くなる。
でもそれはさっきまでの何を考えているのかわからない薄笑いではなくて。
「その話、まだ続くの」
「え、なんで?」
「ずっと待ってるんだけど」
「何を?」
「そろそろ、キスしても?」
最初のコメントを投稿しよう!