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3/30 ゲームをする
たまにしか会えない二人は、もっぱらおうちデート。
おでかけしたいリョウが、おでかけしたくないアヤに付き合っている。
で、おうちで何をしているかというと、ナニぐらいしかしていない。
アヤは基本寝てるか勉強しているかだし、一人暇なリョウが部屋の中を片したり、たまりに溜まった洗濯をやっつけたりしている。
ちょっと、あんまりじゃないか?
そう思ったリョウは、せめて家での過ごし方ぐらい自分に決めさせて欲しいと思うようになった。
せっかく、家の中にいるという妥協をしているのだから。
あまりに退屈なので、ゲーム機を買った。
「どうしたの、それ」
「一緒にやろうと思って」
たいそうな梱包を解き取り出したるは現在なかなか手に入らない人気の家庭用ゲーム機本体。
おそらく誰でも一度はやったことがありそうな、国民的キャラクターのカーレースだが、
「何これ」
アヤは知らない様子。
リョウは何でも器用にこなす男で、また自覚もある。負けない自信があった。
アヤがやったことがないのなら、少し手加減してやるか。
二人並んであぐらをかき、コントローラーを手にする。
Ready Go!
大きなエンジン音、唸りをあげて画面内の車が走り出す。
普段運転しているからと言って、必ずしもゲームでの運転が上手いとは限らない。
初めて触るゲーム端末で勝負しようというのがそもそもおかしい。勝負は目に見えていた。
あまりにフェアではないので、慣らしに3レース練習してからが本番ということにした。
4レース目。つまり、本番。
カウントダウンの電子音。
チェッカーフラッグが振られる。
一斉に、走り出す。
勝ったのはリョウだったが、びっくりするぐらいの僅差だった。
そうだ、アヤもこう見えて案外器用なんだった。
油断してかかってあわや、となったサーフィンの時を思い出す。
でも、勝ちは勝ち。
「やーええ勝負やったな~!でもすごいな、今日始めてここまで上達するって……」
「もう一回」
「ん?」
「もう一回」
泣きの一回を挑むにしてはあまりにも憮然たる表情で、リョウは笑ってしまう。
「ええよ。んじゃあ次負けたら、何でも言うこと聞く、ってのはどう?」
「かまわないけど」
二人の間に火花が散った。
勝負はこれから。
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