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だが、現実は大きく違っていた。
稽古の前は、まず体力づくりだ。
グラウンドを何周も走って、筋トレを何回もやって、柔軟運動を何分もして。
腹式呼吸に、発声に、滑舌。
それからようやく、舞台稽古に入る。
それだけでもう、悠真はふらふらになっていた。
何とか今までやって来られたのは、未緒先輩のおかげだ。
「吉行くん、今日も熱心だね」
そう褒められると、嫌でも張り切るというものだ。
「未緒先輩が励ましてくれるんだから、いつかは主役をやりたいよなぁ」
そんな風に、思うこともあった。
しかし、現実は厳しい。
財津という存在が、悠真の前に大きく立ちはだかっていた。
3年生、2年生を差し置いて、県の演劇大会で主役を張ったほどの実力者。
とてもかなう相手ではない、と悠真が諦めるのも、早かった。
だがしかし。
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