恋する学習塾

1/8
前へ
/149ページ
次へ

恋する学習塾

塾の入るビルを目の前に、俺は深呼吸した。 7月に新しい塾に入るのは緊張する。コースは4月から始まっていて、すでに仲のよいもの同士グループに分かれているだろうし、途中から入ってきた俺は変に注目を浴びるだろう 。 まあいい。 俺は勉強しに行くのだ。 友達を作りに行くのではないのだ。 俺はもともと勉強が嫌いではない、というか好きだ。 頭の回転が早いと小さな頃から褒められていた。 良い遺伝子を継いだおかげだろう。 父親は東大を出て、外資系の IT企業に勤めている。 大学で同級生だった母親は、無添加の化粧品を開発しそれらを使ったエステサロンの経営を始めた。 今では都内に5店舗を構えるまでに成長している。 つまり俺は運良く恵まれた環境に生まれたというわけだ。 特に厳しい親というわけでもなく、かといって甘やかされてもいない。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加