由宇の真実

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2学期の始めの頃だった。 体育の時間、女子だけで教室で着替えていた時、いたずらっ子な男勝りの女子が私のスカートをめくった。 その時彼女の手が由宇の股間に触れたのだ。 「なんかついてる!」 って、その子は大騒ぎした。 最初はみんな相手にしてなかったけど、その子が「由宇、男なんじゃない?」って言った瞬間、みんなの視線が由宇に集まった。 人気者の由宇が不審の的になったことで、皆の好意が一斉に悪意に変わった。 誰かが調べようって言って、由宇は取り囲まれてしまった。 仕方がないから、 「由宇が男の子だったら悪い? かわいいんだからいいじゃん」 って、開き直ってやった。 そしたら教室中が大パニック。 泣き出す子も出てきた。 繊細な小学生たちの心がぶち壊れて大騒ぎ。 先生が来て、親が呼ばれて、会議が開かれて、次の日1時間かけて先生は性別について語ることになった。 先生たちは転入の際の書類で知ってたみたい。 その対処の準備もできてたみたいだった。 クラスの子達は納得しないまでも、小さな脳でなんとか理解はしたみたい。 いろんな人がいるんだ、自分と違うからって差別してはいけないんだ、って。 それから数日は微妙に避けられていたけど、現実に慣れてからは由宇の元来の魅力にみんな引き戻されていった。 由宇は女子と一緒に着替え続けたし、女子トイレに連れ立っていった。 由宇は完全に女の子だったから、みんなもそのうち意識しなくなったんじゃないかな。 ただ由宇を好きだった男の子たちからはやたら冷たくされたっけ。 裏切られたと思ったみたい。 クラスの半数くらいの男子はショックでしばらく暗かったもん。 その後わざとに馴れ馴れしく話しかけたりくっついたりしてやった。いたずら心でね。 「くっつくなよ!」とか 「どっか行けよ!」って言いながらも顔赤くなってんの。 バカみたい。 クラスの男子をからかうのにも飽きたから、それまで友達だったある男子にモーションかけてみた。 麻生賢。 かっこよくて優しくて、由宇のことが大好きだった。
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