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賢の真実
俺は過去のトラウマに縛られ続けている。
夢に見るのはいつも小6の移動教室だ。
軽井沢という都会で暮らす俺たちにとっての憧れの避暑地。
そこで俺たちはオリエンテーリングという名のよくわからないウォーキングをさせられている。
クラスもバラバラの男女6人のグループだが、みんなを先に行かせて俺は由宇とゆっくり歩いている。
由宇のサラサラのストレートの髪は、なんて軽井沢が似合うのだろうと考えながら。
横顔を盗み見ては顔を熱くする。
ユウは時折俺を見てにっこりと笑う。
そして小さな手で自分の髪を撫でる。
その仕草は同い年なのにずっと大人びて見えた。
俺は心をときめかせながら彼女と会話を交わす。
「疲れた?」
「大丈夫」
「荷物重くない?」
「ちょっとね」
「俺持つよ」
かわいらしいピンクのリュックサックを受け取って、自分の黒いリュックと共に右肩にかける。
由宇のいる左側はできるだけ障害物をなくしておきたい。
「賢、優しいね」
そう言って彼女は、あの小さな手で俺の左手を握る。
そのために開けていたのをわかっていたかのように。
俺たちは手をつないで歩き続ける。
夢は続く --。
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