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場面は変わってキャンプファイヤーを囲んでいる。
各クラスが歌やダンスなどの出し物を披露する。
みんなはそれを見ているようで、実は自分の好きな子を探してチラチラと見つめているのだ。
俺もキャンプファイヤー越しに、クラスの女子と戯れる由宇を見ていた。
ああ、なんて可愛いんだ。
長い髪。
まつ毛の長い大きな目。
ツンとして上品な鼻。
絶妙なバランスの唇。
ミニスカートから伸びた細い脚。
全てに目を奪われていた。
君のためならこの火を飛び越えられる、なんてばかなことを考えるほど彼女に惚れ込んでいた。
小学生になりに--。
違うクラスの女の子。
5年の時に廊下で転んだ彼女を助けて知り合った。
保健室に連れて行ったけど、保健の先生がいなかったので、俺が手当てしてあげた。
小さな膝小僧に消毒液を塗ってる間、彼女は痛みにたえるためか俺の左手を握ってきた。
俺の心臓はそれだけでも破裂しそうだった。
女子にはモテるし、手を繋いだのは初めてではなかったけれど、彼女の手から流れてくる電撃にやられてしまったのだ。
それから俺たちは、時々公園や放課後の学校でおしゃべりをした。
なんてこともない会話だったけど、彼女の言葉遣いはとても知的で女性的で好意に溢れていて、わざと汚い言葉を使ったりするクラスのガサツな女子たちとは全く違っていた。
俺がクラスの女子二人に同時に告白されて困っていた時、彼女は余裕の笑顔で言った。
「賢が私以外の子を好きになるわけない」
俺は真っ赤になって頷くことしかできなかった。
彼女はすべてを知っていて思い通りにできてしまうのだ。
由宇にはかなわない。未来から来た大人が少女に乗り移っているのではないかと本気で考えたりもした。
一瞬火が大きく上がり、「おおっ!」という声が上がる。
俺は一途に向こう側の由宇を見つめる。
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