賢の真実

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「けーん。賢ちゃーん。いつまで寝てんのよ~」 目を開けると目の前に由宇の顔がある。 「てっめー近いんだよ!」 と、のけぞって由宇を避ける。 キスでもされたら大変だ。 「ふん。起こしてあげたのに。次、理科室に移動だって」 中学2年になって同じクラスになった。 教室でもやはり由宇は目立つ存在だ。 みんな真実を知っているけど、由宇は全く気にしていない。 それに認めたくないが、由宇の魅力は増す一方だった。 セーラー服姿の由宇はミニスカートをパンチラギリギリでひる返し、去っていった。 ドアから消える瞬間まで、後ろ姿に見入ってしまう自分に嫌気がさす。 小6以来何度も繰り返し見るあの夢。 夢はすべて現実だった。 あの夜俺は真実を知り、由宇に確かめた。 暗い森の中で。 由宇はくすっと笑って言ったのだ。 「そうよ。だから何? そんなんで嫌になっちゃうなんて小さい男ね」 そう言って去っていった彼女の後ろ姿が、さっきの後ろ姿とかぶる。 かっこいいくらい堂々としていた。 でも俺は由宇とそれ以上恋愛することはできなかった。 無邪気なキス。 俺のファーストキス。 可愛い男の子との。 忘れてしまいたい。 でも悲しいことに記憶は消去できない。 嫌いになることもできない。 俺は真実を知ってからも、なんだかんだ由宇に心を振り回されているのだ。 「くそっ」と言って、俺は理科の教科書をカバンから取り出した。
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