恋する学習塾

4/8
前へ
/149ページ
次へ
思わず 叫んでしまった。 ドアの真ん中にいたのか、ぶつかりそうなくらい近くに誰かがいたのだ。 その子がにっこり微笑む。 猫のような妖艶な目。 そこからすっと降りる上品な鼻すじに、形の整った唇。 優しい笑顔。 柔らかそうな長いストレートの黒髪。 まさに俺のタイプじゃないか。 なんでこんなに可愛い子が A クラスにいるんだ……。 「新人くんよろしくね。私、時田由宇。 由宇って呼んでね」 心臓の音を聞かれそうなくらい近い。 こんなに近いのに避けようとしない。 一体なんなんだ。 「俺……成瀬雪成」 「雪成くんね。仲良くしよ」 そう言って由宇は俺の手を握る。 握手? 違う。何だか誘惑されてるような感じだ。 俺の手を両手で優しく包む。 こんな塾があったのか。 お母さんありがとう! 「おい、由宇。何独り占めしてんだよ。みんなに紹介しろよ」 俺の視界を占めていた由宇が横にずれると、やっと白く明るい教室の全貌が目に入ってきた。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加