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思わず 叫んでしまった。
ドアの真ん中にいたのか、ぶつかりそうなくらい近くに誰かがいたのだ。
その子がにっこり微笑む。
猫のような妖艶な目。
そこからすっと降りる上品な鼻すじに、形の整った唇。
優しい笑顔。
柔らかそうな長いストレートの黒髪。
まさに俺のタイプじゃないか。
なんでこんなに可愛い子が A クラスにいるんだ……。
「新人くんよろしくね。私、時田由宇。 由宇って呼んでね」
心臓の音を聞かれそうなくらい近い。
こんなに近いのに避けようとしない。
一体なんなんだ。
「俺……成瀬雪成」
「雪成くんね。仲良くしよ」
そう言って由宇は俺の手を握る。
握手?
違う。何だか誘惑されてるような感じだ。
俺の手を両手で優しく包む。
こんな塾があったのか。
お母さんありがとう!
「おい、由宇。何独り占めしてんだよ。みんなに紹介しろよ」
俺の視界を占めていた由宇が横にずれると、やっと白く明るい教室の全貌が目に入ってきた。
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