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「あん、痛いよ」
俺はどうしたらいいのかわからずされるがままになっていた。
実際くっついていたいし。
「離れろよ! お前また……」
「うるさいな! わかったわよ」
あ、わかっちゃったの?
由宇は俺の腕を離してしまった。残念……。
このやりとりを、知瑠と美智は見てもいない。
知瑠は教科書を開いて頬杖をついて物思いにふけっている。
美智は窓の外をぼんやり眺めている。
なんてマイペースな兄妹だ。
沙耶は小難しそうな数学の本に目を落としている。
変なヤンキー……。
由宇は俺に気があるのだろうか。
ものすごく積極的に俺に絡んでくる。
質問攻めにされ、俺は素直に答える。
賢は見張るように俺らの側に立ち、時々会話に入ってくる。
悪いやつではなさそうだが、由宇に対する当たりがきつい。
本当に俺のことを心配して由宇をたしなめているような感じだ。
なにがそんなに心配なのだろう。
賢も過去に遊ばれたことがあるとか?
由宇は話しながらたまに俺の体に触れる。
その度に俺はときめいてしまう。
たった10分の接触で、俺はすっかり恋に落ちてしまった。
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