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ケイタ君は5歳になったばかり。希望に満ち、何をやるにも楽しくて見るもの目にするものに興味を抱かずにはいられません。
或る日、アパートの部屋で遊んでいますと、キャビネットの上に置いてある腕時計が目に留まりました。動いているかと思いきや止まっていますので、ははあん、これはガラクタだ、だから僕の自由にして良い物だと思い、自分の力で宝物にしようと或る工夫を施しました。
そこへトイレで長いこと踏ん張っていたお父さんがやってきますと、ケイタ君は喜び勇んでお父さんに例の腕時計を差し出しました。
「これ見てみやあ!金時計になったがや!」
見ると黄色のマジックペンで塗りつぶしてあります。お父さんは息子より腕時計が大事だったのでしょうか、「あーあーあ、わややわ!とろ臭いことをして!このたわけが!」と怒鳴るなりケイタ君の頭に拳骨を食らわしました。その途端、ケイタ君はいってえ!と叫んで決壊寸前のダムみたいに目頭と目尻に涙が溜まり溢れそうになりました。
「何でこんなことをした?!」
「だって、こわけてるもん!」
「こわけてるんじゃない!電池が亡-なっとるだけだがや!」
ああ、そうなのかとケイタ君は思ったものの喜んでもらえると思ってやったことでしたので怒られることに納得がいきません。
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