嘘吐きイノセント

12/13
前へ
/94ページ
次へ
 わたしは話した。かおりちゃんが怪我をして苦しんでいる時に、わたしは欠席を喜んでしまったことを。心配しているふりをして、自分のことばかり考えていたことを。  佐藤苺樺は優しくなんてない。本当は、嘘吐きの悪い子だということを。  懺悔するかのように、心に抱えていたものを吐き出すように、わたしは包み隠さず、かおりちゃんに話した。 「それで、最近悩んでたの?」 「うん……」 「本当に、苺樺はいい子だね」 「え? 何で? 今の聞いてたでしょ? わたし、いい子じゃないよ?」 「いい子だよ。心が綺麗でピュア。そして、強いよ。格好良い」 「えええ……」  かおりちゃんは怒るどころか、思ってもみないことを言い出した。  わたしは、ただ慌てる。 「可愛い、苺樺。吉田のこと、好きなの?」 「へっ……! あ、いや、えっと、そのお……!」 「慌ててる慌ててる。そうかそうか。あいつ、いいやつだからね」 「うう……かおりちゃん……」 「良いと思うよ。だって、二人きりになれたから嬉しかったんでしょ? あたしだって、同じように考えると思うし。それに、本当に嫌なやつならさ、今の全部、黙ってると思うから。だから、隠し通せないで悩んじゃう苺樺は、いい子だよ。それに可愛い」 「か、可愛いは違うよ……」 「違わないの。あたしがそう思うんだから、苺樺は可愛い。決定!」 「ふええ……」  あははと、楽しそうに笑うかおりちゃん。  いい子なのは絶対に、かおりちゃんの方だと思った。 「じゃあ、良かったね。二人三脚、一緒に走れて。どうだった? 優しくしてもらった?」 「え……う、うん……励ましてくれた」 「そうかー。いいなー。……あいつだと絶対そうはいかないから、羨ましい」 「あいつ?」  わたしが首を傾げると、かおりちゃんはどこか、しおらしくなった。はにかんでいる。 「そうだね。あたしだけが知ってるのは、不公平だからね。苺樺にだけ教えてあげる。あたしの好きな人」 「かおりちゃんの? え? 誰?」 「……あいつ」  そう言ってかおりちゃんが指差したのは、吉田くんの隣で笑っている男の子。 「腐れ縁だし、喧嘩ばっかだからさ、あいつにそんな気がないのは、わかってるんだけどね……」 「そうだったんだ……」  近くにいたのに、全然気が付かなかった。確かにけんかばかりの二人。だけど―― 「応援するね」  応援したい。そう思える二人だった。 「ありがとう。あたしも応援する。委員の時とか、二人で行動しなね」 「えっ、う、うん……」
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加