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だけど、同じくらい重要な物の用意が、まだだった。
「どうしよう、お母さん……」
「苺樺、まだ衣装を何にするか決めてなかったの?」
そう……明日はハロウィンにちなんで、コスプレをしようということになったのだ。
だけどお母さんの言うとおり、わたしはまだ何の格好をするか決められないでいた。
「かおりちゃんは、何を着るの?」
「魔女って言ってた。帽子やマントは作ったんだって」
「すごいわね。じゃあ、魔女以外の方が良いわね。となると……妖精とか可愛いんじゃない?」
「妖精? それ、ハロウィンに着るものなの?」
ハロウィンって、怖いお化けや怪物に扮するんじゃなかったっけ?
クラスでもゾンビメイクを練習している子がいたし。
「あら、何でも良いんじゃない? 着たいものを着て、楽しめば」
「着たいもの、か……」
「どんな物があるか、見た方が早そうね。今から作るのも大変だろうし。じゃあ、手を洗って買い物に行きましょうか」
何故かわたしよりも楽しそうなお母さんに連れられて、わたしは衣装を見に行くために出掛けることになった。
予定外である弟の衣装まで準備していたところをみると、当日も我が家ではパーティーかもしれない。
そんなこんなで、わたしはなんとか準備を済ませることができたのだった。
◆◆◆
「苺樺、可愛い!」
翌日、わたしは約束の時間にかおりちゃんの家へお邪魔して、一緒にお菓子作りをした。
クッキーやマドレーヌが出来上がり、良い匂いが漂う。
食べ始める前にと、かおりちゃんと二人、用意した衣装に着替えた。
「黒猫、似合ってる!」
全身黒のワンピースに、猫耳カチューシャ。腰の辺りには尻尾がついているという衣装だ。
猫は好きだし、かおりちゃんの魔女とも合うのではと思い、選んだのだ。
「かおりちゃんの魔女も可愛いよ。作ったって言っていた帽子がそれ? もしかして、ベルトも作った? マントはビニール袋? すごいね!」
「ありがとう、苺樺。そうそう。帽子とベルトは、黒の画用紙巻いて、模様を作って貼っただけなんだけどね」
かおりちゃんの衣装は、白のトップスに、黒い大きなベルト。肩には黒いマントを羽織り、紫のスカートをはいている。頭には、帽子を被っていた。
「手作り衣装なんて、すごいよ。わたしのは全部、セットで売っていたものだから」
「そんなことないって。服は持ってる物をそのまま着ただけだし。やっぱり、売り物の方が可愛いね」
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